暮らしに色を取り入れてみませんか? その5
- 2021年5月27日
- ナビコラム
~北欧の建築家アアルトに学ぶ心地よい住まい~
最近、家での暮らしに関心を持つ人が増えたように思います。住み心地のよさでまず思い浮かぶのは、北欧で最も人気のあるフィンランドの建築家アルヴァ・アアルトです。1936年に建てられた彼の自邸は、デザインの美しさだけでなく、光や風の取り入れ方などの基本的な住まいの性能と使いやすさ、さらに家族の幸福感を満たすような設計となっています。基調の白に自然の素材の温かな色合いを加えたコーディネート、シェードから漏れる光が美しい照明、滑らかな曲線で明るい木の色の家具など、日本の住まいに取り入れやすいヒントがたくさんあります。
では、ヘルシンキ郊外、湖にもほど近い緑豊かな住宅地にあるアアルト邸にご案内しましょう。
外観は、思いのほかこじんまりしていて、白く石灰で塗装されたレンガと濃い茶色の木の板で環境に馴染んでいます。
◇ 1階 パブリックゾーン
(アトリエ、リビングダイニングなど来客時も使う空間)
アトリエの引き戸を開けると、ダイニングへと続くリビングがあります。
この2部屋では、天井まである大きな窓の光を植物性の簾で調節し、端の細長い窓で換気します。夜のリビングは、暖炉と低い位置に下げたペンダント、スタンドの組み合わせで、昼夜で全く違う光の美しさを楽しめそうです。ゼブラ柄の椅子、飾られている絵がアクセントになっています。
ダイニングの壁に貼られているのはジュート麻。旅行先のイタリアで購入したダイニングチェア、深い赤色のペンダントとのコーディネートは、ナチュラルで温かです。
ダイニング収納は、収納部分とドアが一体になったデザインです。
収納する物を想定して計画された、使いやすそうな家具です。引き戸の採用、棚板の色、床のフローリングの貼り方等隅々まで細やかな設計です。
アトリエから5段ほど階段を上がったところに書斎があります。
レンガ模様のカーテンとグレーのカーペットのコーディネートで、空間に適度なリズムを与えています。
◇ 2階 プライベートゾーン
暖炉のあるファミリールームを中心として、寝室、個室、ゲストルームが配置されています。寒い冬、寝る前に家族の距離が縮まり,和やかに歓談している様子が思い浮かべられます。植物は、壁を這わせるナチュラルな飾り方です。
寝室は、イエローとブルーのコーディネート。自然素材のヘッドボードとシェードランプの白熱電球のオレンジがかった光で、温かさが増します。
個室は、樹木の見える大きな窓からの光と薄いブルーの壁が清々しい印象です。窓に面したテーブルと窓枠の木の色が、優しく落ち着いています。
見てきたように、各部屋は、誰がどのように過ごしたいかに合わせて素材と色彩が決められています。思い出の品々を大切に使い、光と植物で自然を室内に取り込みながらの、心の豊かな暮らしが見えてきませんか?
住まいのナビゲーター
一級建築士 亀井 真理
次回のナビコラムは小林 輝子さんの「性能と住み心地、住まいのバランス」です。
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