Case 14:設計事務所編
空間のつながりを生み、夫妻の居場所を創出
マンションの3LDK住戸のリフォームです。3方向に窓のある角部屋です。以前は完全に区切られていた個室の壁を一部取り払って空間を再構成。LDKから寝室、書斎、さらには中廊下をはさんで並ぶ納戸や水回りまで、全体がつながり光と風が通る住まいへと一新させました。キッチンのカウンターや玄関脇のベンチなど、ちょっとした居場所を随所に設けています。
住まいづくりデータ(Mさん)
【家族構成】 | ご夫婦 | 【依頼先】 | 設計事務所 |
---|---|---|---|
【計画】 | マンションリノベーション | 【構造】 | 鉄筋コンクリート ラーメン構造 |
【竣工年月】 | 2020年11月 |
【家族構成】 | ご夫婦 |
---|---|
【依頼先】 | 設計事務所 |
【計画】 | マンションリノベーション |
【構造】 | 鉄筋コンクリート ラーメン構造 |
【竣工年月】 | 2020年11月 |
ナビセンターとの付き合い&家づくりの経緯
多彩なプログラムに取り組み、改修まで一気に進みました
Mさん夫妻は、新築時に購入し、20年以上住み続けてきたマンションをリフォームしました。
繁華街の駅からすぐという便利な立地はお気に入りですが、3LDKの間取りはMさん夫妻にとって使いにくく、結果的に利用しないスペースが増えていました。時間の経過と共に2人の生活スタイルが変わり、家で過ごす時間が長くなってきたことを受けて改修に踏み切りました。
リフォームに向けて最初に動いたのは妻でした。折り込みチラシで見た住まいづくりナビセンターのイベントに参加し、家づくりのノウハウを聞ける場所であることを知りました。その後、夫妻で改めて来館し、ナビゲーションに始まる各種のプログラムに取り組みました。そこからの動きは一気に加速します。住まいの計画書づくりの他、マンションリフォームセミナー、間取りのドリルセミナーにも参加してパートナープログラムへ。設計事務所をパートナーとし、設計、工事へと進みました。
改修では、仕事やくつろぐ時間などその時々に応じて2人が過ごせる居場所を確保しつつ、家全体に光と風が流れ込む心地良い空間を生み出しました。インテリアには、雰囲気のある間接照明などご夫妻のこだわりを細部に反映しています。
「2人で話しをしていても、家づくりの方向性はなかなか決まりません。住まいの計画書づくりなどを通して、リフォームに向けた共通の目標を確認できました」とMさん夫妻は振り返ります。
Mさんの住まいづくり
デッドスペースの解消を目指す
- 住まいづくりのきっかけ
-
1998年の新築時に購入したマンションに住んでいます。実は当初から、私たちには使いにくい間取りだと感じていました。中廊下式の3LDKのため部屋が細かく分かれて、玄関や廊下が暗い。リビングと寝室以外はほとんど使わず、多くがデッドスペースになっていました。
それでも以前は週末に外出することが多かったので、それほど気にしていませんでしたが、最近は2人とも家にいる時間が増えています。
駅近で利便性の高い立地や管理組合がしっかりしている点は気に入っているため、現在のマンションを改修することにしました。
専門家に相談することに
住まいづくりナビセンターへ
- 来館→ナビゲーションを受ける
-
それぞれの声を客観的に引き出してもらう
新聞の折り込みチラシを見て、住まいづくりナビセンターが主催する収納ショールーム見学会に参加したのがお付き合いの始まりです。リフォームの計画が具体化する以前のことで、この時は妻1人で参加しました。建具や家具の金物やシステム収納を見学できて面白かったですね。その際に、住まいづくりナビセンターはいろいろな話を聞ける場所だということも知りました。
その後、リフォーム会社に声をかけてプランや見積もりを何回か出してもらいましたが、なかなか意に沿った提案に出会えません。リフォーム会社とやり取りしている過程では、当時は転職を控えて忙しかった夫の意向をうまく反映できていないのではと気になりました。2人にとって、どのような家にしていくのがいいのか。第三者にそれぞれの声を引き出してもらい、2人で目標を共有できるようにしたいと思いました。そこで、改めて夫婦そろって住まいづくりナビセンターを訪れてナビゲーションを受けました。
ナビの視点
ご夫婦の考え方を再確認していただく場に
長い時間生活を共にしてきたご夫婦でも、どのような住まいを望んでいるのかという方向性が異なることは珍しくありません。
住まいづくりナビセンターは、基本的な疑問や困りごとにもお答えしながら、ご家族が求める家づくりや改修の方向性を考え、互いの意思を確認していけるプログラムをご用意しています。スタッフはあくまでも公正中立な立場で対応しますので、ご家族それぞれに合ったスピードで家づくりを考えてください。
- 住まいのナビゲーターより
-
ナビゲーションでは、Mさん夫妻がリフォームを思い立つまでのお話や、これまでの住まいづくりへの取り組みなどについてお聞きしました。いくつかの依頼先とやり取りされたご経験をお持ちでしたが、お二人それぞれの考えを整理して先に進むことについては難しさを感じているようでした。
一緒に住むご家族それぞれの要望や、今の暮らし、今後の暮らしについて一旦立ち止まって考えることも必要であることをお伝えし、住まいの計画書づくりの利用をお勧めしました。 依頼先についても迷われているようでしたので、住まいの計画書づくりに取り組むことで、方向性が見えてくるのではとお話をしました。
- 「住まいの計画書」をつくる
-
「共通のゴールに向かえる」という気持ちになれました
住まいの計画書づくりは面白かったですね。気になるイメージの写真選びでは、夫婦で同じものが好きだったり、それぞれが嫌いなものが分かったりという意思疎通ができました。お互いが抱えていた課題を解決して「共通のゴールに向かえるね」という気持ちになれました。住まいに関して素人の2人がいくら話しても、こうすんなりとは運びません。良く出来たプログラムだと実感しました。
その他、「マンションリフォームセミナー&相談会」「間取りのドリルセミナー」にも参加しました。間取りのドリルセミナーでは、部屋のどこに窓があれば風は通りやすいか、この間取りのどこが良いかを指摘するといった練習問題に取り組みました。ここで得た視点は、実際のリフォームを考える時の参考になったと思います。
ナビの視点
住まいの計画書づくりでは、大きく3つのプログラムを行います。好きな写真を選ぶ、言葉を使って興味を持っていただく、「LD」や「玄関」など場所ごとにどんなイメージを持つかを考える、というものです。ビジュアル要素や言葉から、1人ひとりが家に対して何を求めているのかを浮かび上がらせていくのが目的です。仮に、1つの写真に対する夫妻の好きと嫌いが分かれていても、そこには何らかの理由があります。この写真の何が好きで何が好ましくないと感じるのかを分析すると、実は共通する志向が横たわっていることを発見できたりもします。そうした側面を引き出していくのがナビゲーターの役目です。
- 住まいのナビゲーターより
-
Mさん夫妻の場合、例えばカウンターをどのように使いたいかという質問に対して「ここで立ち飲みをしたい」というのがご主人の意見。奥様も「それいいね」と即座に反応されました。こういうキャッチボールを通して新しい生活のイメージが膨らみ、目指す方向が共有できるようになります。使いたいイメージを表現した奥様のイラストも、そうしたコミュニケーションを促すツールになったと思います。
- 「パートナープログラム」を利用
-
これまでの話が伝わる会社
その後もリフォーム会社に2件ほど当たりました。そこで気付いたのが、住まいづくりナビセンターでやり取りしてきた話をまた1から始める作業は、かなり大変で気が重いということです。
大手リフォーム会社であれば、設計工事の提案がある程度パッケージングされていて大筋に問題はないのでしょう。でも、こちらの細かい要望にどれだけ対応してもらえるかは分かりません。近所の小さなリフォーム会社なら細かい対応は可能かもしれないけれど、信頼性という面まではすぐ判断できません。その点、住まいづくりナビセンターのパートナープログラムなら安心できるし、私たちの意向も伝わりやすいのではと思いました。
実際に設計が始まった時期に、新型コロナウイルス感染症の影響で在宅勤務が始まりました。当初は住戸内が一体となったワンルーム空間を望んでいたのですが、仕事と生活の場は別に確保しなければならないと気付いたのです。大きな方向転換でしたが、設計者は必要な場所を用意しつつ、家全体に光と風を取り込みたいという私たちの要望をかなえてくれました。
ナビの視点
依頼先とのコミュニケーション
住まいの計画書づくりは家族それぞれの意思を確認するという目的に加え、依頼先とのコミュニケーションを練習する狙いもあります。実際の家づくりで依頼することになる設計事務所や工務店、リフォーム会社に何を伝えれば良いのか。迷った時には、住まいの計画書づくりで得たエッセンスを思い出してください。
もっとも家づくりやリフォームが初めての人にとって、どの会社に依頼すれば良いのかを考えること自体のハードルが高いことは否めません。そうした場合は、住まいづくりナビセンターに登録した設計事務所、工務店、住宅メーカーなどをご紹介する「パートナープログラム」をご利用いただくのも1つの手です。プログラムの期間は住まいづくりナビセンターもご相談にのるので、安心してお話の場に着いていただけます。
- 設計者のひとこと
-
「大きなワンルーム」から「生活と仕事の場をしっかり確保した空間」へ。
設計の途中で大きな方針の変更がありましたが、すっきりと機能的で、光あふれる開放的な空間にしたいというご夫妻の根本的な希望は変わっていません。
住まいの計画書づくりなどを通して、家飲みのできる場所づくりや収納場所の確保といった具体的なイメージを事前にお二人でしっかり共有できていたことも、根っこの部分で一貫したリフォームを実現できた要因ではないでしょうか。
設計期間約3か月
工事に着手
施工期間約2か月半
Mさんの新しい住まいが完成
こだわりのポイント
1.光と風が通り抜ける家
Mさん夫妻が改修前に感じていたのは、「部屋が小割りのため風が通りにくく、玄関や中廊下に光が入らなくて暗い」ことでした。そのため当初は、家全体をほぼワンルーム状につなげた間取りを希望していました。ところがプラン検討中に夫の在宅勤務が始まり、仕事場と仕事以外の場を別に確保する必要性を痛感したことから方針を変更。南側のLDKの位置はそのままに、寝室、書斎、納戸を個別に設けるプランに決めました。
結果的に、間取りそのものはリフォーム前後で大きく変わっていません。しかし、寝室と書斎の間にあった物入れを取り払って行き来できるようにしたり、各部屋の壁の上部を開口することで、光と風が家全体に行き渡るようになりました。北側の個室の外に設けられたサービスバルコニーも、土間を延ばして玄関まわりと一体化。家の中央まで光と風を導き入れる役割を担います。
2.間接照明と天井の段差
LDKや寝室の壁、天井の随所に間接照明を設けました。直接照明の光は眩しいため避けたかった妻と、居酒屋のような雰囲気で家飲みしたいと考えた夫の意向が一致した格好です。
間接照明を取り入れたことに伴い、既存の室内にあった天井面の複数の凹凸も整理しました。改修前、梁やダクトが通る中央部分だけ天井が低く両側は高かったリビングは、窓側の高い天井と中廊下側の低い天井の2段にまとめました。必要以上に高い天井を備えていた中廊下の天井は、寝室の間接照明部分と同じ高さに揃え、その高さがリビングまで続くようにしています。天井高を整理したことで室内がすっきりとし、視覚的な広がりをもたらします。
リビングの高天井部分は、キッチンカウンターと同じカバ材で仕上げました。間接照明の下、他の部分に張った白いクロスとの対比が際立ちます。
3.家のあちこちに居場所あり
「くつろいでお酒を飲める場所を設けること」。そんな夫のこだわりを受け、改修後の家では住戸内のあちこちにゆったりできる居場所を設けています。靴の脱ぎ履きをするために設けた玄関横のベンチも、格好の飲みスポットの1つ。帰宅後、靴をぬがずにまず1杯楽しむことができます。キッチンとリビングを隔てるカウンターは、時には同じマンション内の友人も利用する立ち飲み処になっています。
仕事のできる場所もしっかり確保しました。玄関に近い1室は、背中合わせで夫妻それぞれのデスクを置いたスペースに。LDK、寝室など機能ごとに部屋を用意しています。