改正民法と住まいに関わる契約の注意点 その4
- 2020年7月21日
- ナビコラム
~住宅の売買契約、どこが変わる?~
戸建て・マンションを問わず、新築の分譲住宅や中古住宅を購入する際の契約を「売買契約」と言いますが、こちらについてはどのような変更があったのでしょうか。まず、「隠れたる瑕疵」が「契約不適合」に変わり、「隠れたる」という言葉が無くなりました。ただ、住宅の不具合の多くは引渡し時点では隠れていることがほとんどで、傷や汚れと言った、隠れているとは言い難い不備に気が付かなかったような場合を除き、問題になることは殆どありませんでしたから、実務的な影響は少ないと思われます。
売主に問える責任の内容も変わりました。旧民法では、買主は瑕疵に対して損害賠償請求と契約解除請求しかできないとさていましたが、改正民法では、契約不適合に対して、上記に加え、追完(修理をして完成させる)請求と代金減額請求も可能となりました。ただ、不動産取引の実務においては、契約解除のハードルは高く、また、損害賠償請求は双方にとって現実的でないため、アフターサービス基準により補修を行うことを約しておき、賠償に替えることで対応をしてきました。今回の改正で追完請求権が加わったことで、民法上の権利として改めてこの補修対応が確認されたことになりますね。なお、代金減額請求は、数量に契約不適合がある場合は合理的ですが、こと住宅、建築物の契約不適合に関しては馴染みにくいと考えられているようです。
それでは、権利行使期間の変更はどうでしょうか。実は、旧民法の「瑕疵の存在を知ってから1年」との規定は、瑕疵を知るまでの期間についての制限がないことから、現実的でないと考えられてきました。そこで、宅建業法では、「宅建業者は瑕疵担保期間を引渡しから2年未満としてはならない(新築住宅における、構造と雨漏りに係わる不具合を除く)」旨を定めることにより、宅建業者が売主の場合(新築住宅の場合はほぼ宅建業者が売主です)は、実質的に引渡し(=権利行使できる時)から2年という瑕疵担保期間を標準化してきました。この構成は民法改正後も引き継がれますので、新しく整理された消滅時効の「知った時から5年、行使できる時から10年」が適用されるケースは少ないと考えられます。
なお、中古住宅の場合、所有者個人が売主となり、宅建業者は仲介業務のみを取り扱うことがほとんどです。個人売主の場合、瑕疵担保責任を負わない、あるいは負っても3か月程度という契約が多く(宅建業者が売り主の場合は、中古でも2年)、この点は改正民法でも変わりません。そこで、特に構造や雨漏りに関する不具合といった、住宅の基本にかかわる部分については、事前に重要事項説明書等で状況を確認しておくことが必要です。個人売主の場合、引き渡し後の責任追及が実質的に困難な場合もありますので、事前のインスペクション等により購入する中古住宅の状況を把握し、契約内容を詰めることの大切さを改めて認識したいところです。
(その5 ~まずは約款の内容を押さえましょう!~ につづく)
(注記)
本コラムは、建築士の立場から見た改正民法の住まいづくりへの影響について、個人的見解をお話しているものです。改正民法や契約などの詳細については、弁護士等の法律専門家にご相談くださいますようお願い致します。
住まいのナビゲーター
一級建築士 金山 眞人
次回のナビコラムは
住まいのナビゲーター 亀井 真理さんの「暮らしに色を取り入れてみませんか? その3」です。
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