性能と住み心地、住まいのバランス

性能と住み心地、住まいのバランス

皆さんが家に求めることはどんなことでしょう?
コロナ禍で、週末なども家で過ごすことが多くなったと思います。
そのことで、健康を維持しながら快適に暮らすことが、これからの住まいには求められているようです。

私は、77歳という高齢の親を抱えていますが、外出をすることが少なくなってしまいました。そのことで、段差につまずいたり、一昨年までは問題なく歩けていた坂道で疲れてしまうようになりました。経験上、脚が弱るのが一番よくありません。
平坦な道を散歩するだけでは改善されず、無理がなく、ゆっくり上下の運動をするだけでも脚力が維持できることがわかりました。ですから、住まいの中での適度なバリアーは必要だと考えています。
体が動くうちは、注意を払える範囲で計画をすることが望ましく、車椅子使用や、介護をお願いするようになった際に、必要なリフォームを考えられるようにしておくということが大切です。

また、昨年から続く、新型コロナウイルスの蔓延で、殆どの時間を住まいで過ごすようになったことで、テレワーク、オンライン呑み、コロナ離婚、テイクアウトなどといった言葉を耳にすることが多くなりました。そのことで、外で働いている間は気付くことがなかった、家の住み心地に影響する「日中の部屋の日照や通風」、「家族間の距離を保つスペース」、「家族の生存確認と団欒」、「室内でも健康維持ができるような間」なども意識するようになりました。

これらの「住み心地」や「住まいの性能」は、安心で快適な暮らしを支えるために、どちらか一方だけではなく、両方のバランスがとれていることが大事だと思います。
新しい生活様式に対応できる住まいを考えなければならなくなってきていることは確かです。

開口部を減らし、壁面を多く造ることは耐震性や省エネ性を向上させるも、日照が乏しくなり、開放性のある間取りにできないなど支障がでる場合もあります。性能を求め過ぎると、維持・管理にも影響し、それが家計に優しく、暮らしにとって快適であるかは別の問題となってきます。その住まいで本当に心も体も健康で快適な暮らしができるのかを計画や内覧の段階で考える必要があるかと思います。

🏠コロナ禍で新しい生活様式を取り入れて計画した住まいの事例を挙げます。


玄関を入り、土間の続きに納戸があります。コートなどの衣服や防災用品などを収納できるスペースで、隣り合わせで、洗面所、浴室への動線を確保しています。外から帰宅して、うがいや手洗いが日常化したことに配慮した計画です。


家族の集まるリビングダイニングは、開放感を得ながら熱効率を上げるため、全体の天井高さを抑えた計画です。
吹抜けを設けることにより、日照も確保でき、階高や天井高を抑えたことで、構造的なバランスも確保できています。


※採光は、部屋の明るさを確保するためのものですが、日照は太陽からの陽射しの暖かさや明るさを肌で感じることができるものです。
どの住まいにも、建築基準法で定められているのは採光の確保ですが、日照も大切です。


キッチンの奥には家事スペースやパントリーがあり、家族が家に居る時間が長くなったことで、奥様の個室的なスペースを家事動線の中に計画しました。


生活・家事動線の通路幅に、ゆとりを持たせて、将来、手摺の取付けや、モデルチェンジした家電製品の搬入、お子さん達が家事も手伝えるようなスペースを確保しました。


リビングから2階に上がる階段は日常的に使用するので、段数を増やし、勾配を緩やかにしています。
子育て世代なので、近くに住む高齢の親御さんが来訪した際や、小さなお子さんが上り下りしやすいよう、手摺の太さや位置も考えた計画としました。


リモートワークになったご主人が、仕事をする書斎や将来3部屋に分割できる子供部屋なども2階に配置しているので、階段の役割は重要です。
子育て世代も高齢者の世代からも、バリアーフリー(段差のない、住まいにしてほしい)というご要望が増えましたが、在宅での仕事や、ご家族が家で多くの時間を共にすることが日常化するなかで、運動量も減り、健康を損なうケースも増えています。

家で過ごすことが、日常化していくなかで、ここで書かせていただいた新様式に対応した住まいの考え方が、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

住まいのナビゲーター 
一級建築士 小林 輝子 

次回のナビコラムは
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#在宅ワーク#新しい生活様式

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