配偶者居住権入門
- 2020年6月18日
- ナビコラム
今年4月1日に施行されたばかりの「配偶者居住権」
今回は、ほんの入口をできるだけ簡単にまとめてみます。
1.配偶者居住権とは
『被相続人(亡くなった人)と一緒に住んでいた配偶者が、終生、自宅に住み続けることができる権利』です。
2.制度創設の背景にある社会問題
配偶者に先立たれた高齢者にとっては、そのまま自宅に住み続けられることはとても重要で、加えて、老後の生活資金を確保することとの両立は大きなテーマです。
ところが、現代社会では不動産の高騰もあって、相続財産のうち自宅不動産の評価の占める割合が高く、配偶者が自宅を相続するとなると、子供の相続分が少なくなって不公平が生じ協議が難航するケースも。結果的に、配偶者が自宅を手離す、或いは、自宅を確保する為に現金を子供の相続分に充てた結果、老後の生活資金に困る、という事が多く起こっているそうです。
3.創設された相続制度
自宅の権利の相続の仕方を従来の所有権一本でなく、配偶者は「配偶者居住権」、子供は「配偶者居住権付きの所有権」という組み合わせにできる制度です。
この制度を利用することで「配偶者の住まいと老後資金問題の解決」が期待されます。
具体的な数字で表現してみます。(ここでは相続税は勘案しないものとします。)
・相続人は、配偶者と子供がひとりと仮定。
・相続財産評価総額は、自宅不動産4500万円とその他現金等2000万円で計6500万円
・相続割合は、法定相続割合の2分の1ずつ。配偶者と子供、各々3250万円ずつ。
・配偶者は、住み慣れた我が家を終の住み家にすることを希望。
そこでまず、
1 自宅不動産の相続財産評価額を「配偶者居住権の評価額」と「所有権評価額」に分けます。算出式は配偶者の年齢、建物の築年数等を基に算出できます。(今回は説明を省略)
計算の結果、自宅不動産の配偶者居住権が2000万円、所有権が2500万円になったとします。
2 配偶者は相続分3250万円を、自宅の居住権分2000万円と現金1250万円で相続します。
子供は相続分3250万円を、実家の所有権2500万円と現金は750万円で相続することになります。実家は将来、親が亡くなった時点で自動的に子供の完全な所有権となり売却も建て替えも自由になります。また、配偶者居住権を設定していた効果で二次相続時に子供にとって相続税対策になる可能性もあります。
4.重要な「登記」
配偶者居住権は、不動産の登記に設定することで初めて効力が生じます。相続の発生後、スムーズに設定登記するためには、被相続人予定者は、遺言書で配偶者居住権のことを明記しておくと良いでしょう。
遺言書に記載が無いと、権利の登記には相続人全員の同意が必要になります。子供が同意してくれないと登記ができないことも。
いずれにせよ、配偶者居住権があなたにとって有用かどうかは個別の事情によります。
もしかして?と思う方は、一度、専門家(税理士、弁護士、司法書士等)に相談してみましょう。
家をはじめ「持つこと」に比重を置いてきた日本社会、昨今は、持つことに拘るのではなく、車や服も含め必要な時に必要なものを使う(保有する負担を減らす)という価値観に変化してきました。配偶者居住権もその一つと言えるかもしれません。
住まいのナビゲーター
一級建築士 川道 恵子
次回のナビコラムは
住まいのナビゲーター 金山 眞人さんの「使って便利実感!の住宅設備 その2」です。
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