日本の住まい 欧米の住まい その3
- 2020年6月25日
- ナビコラム
「日本で生まれ育った私が
10年以上に亘りアメリカとイギリスで暮らし
住宅について感じたことを3回シリーズでお伝えしています。
今回は窓について…」
~窓~
四季があり温暖で湿潤な気候風土の日本は、屋外の自然を上手に室内に取り込むことにより、快適に暮らすノウハウを持っていると思います。大きく窓をとって、光と風を家の中へ取り込んでいる。例えば、夏は南北に風を通して熱気を逃がす。大きな庇をつけることや、夏場に葉っぱを茂らせる広葉樹を家の南に植えることで日差しを遮る。その広葉樹は冬になると葉を落として日差しを室内へ取り込む。これらは快適に四季を過ごすための昔からの知恵ですよね。
木と紙で作った住まいを原点に持ち、内と外の曖昧な空間を使いこなしてきた日本と、石造りのしっかりした建物で屋外の厳しい環境をシャットアウトして室内の環境を保ってきた欧米の住まいとは根本が大きく違います。日本の住宅は「自然を味方につける事に優れた住まい」と言えるかもしれませんね。
欧米の伝統的スタイルの住宅は、窓が小さく少ないのが特徴です。頑丈な石造りの家を原点とするので窓は小さくなりますよね。けれども新しい住宅には開放的で大きな窓が多くなってきている様に思います。日差しを室内に取り込むことの素晴らしさ、世界共通になってきているのでしょうか。
日本の住宅は南側に大きな窓を設け、リビング・ダイニング等メインの部屋を配置しますね。一戸建ての場合、敷地の道路付けがどの方角でも、家族が集まるお家の中心は南向き、というのが一般的です。
ところが欧米の住宅は、方角に関係なくストリートに向いて建っています。そうすると、リビング・ダイニングに陽が差さなかったり、せっかくの南側に一つも窓が無い家さえあり、南向きに大きな窓のある家で暮らし慣れている日本人にはちょっと残念です。けれど、整然とストリートを向いている欧米の家並みはとても美しい街並みを形作り、成熟した豊かな暮らしを感じることができます。街並みを大切にする欧米の考え方は是非見習いたいものですね。
日本には、大きくても簡単に開け閉めできる引き違い窓、断熱性を高める二重サッシ、視線を遮りながら風通しができるルーバー窓など、欧米の窓とは一味違う使い勝手の良さがあると思います。室内に風を取り込み、暖かい陽の光を好む日本人の暮らしには欠かせないものですね。住まいの中に自然を取り込む事に長けた日本の伝統から生まれたものなのでしょう。
窓は外と内をつなぐ重要なパーツです。採光、通風、防犯、断熱、使い勝手etc.
新築やリフォームで、上手に窓を選んで快適な住まいづくりをして下さいね。
~最後に~
欧米の住宅の優れた点を発見したり、日本の住まいの良さを再確認したり。欧米での生活は、日本での当たり前の暮らしを改めて見つめ直す機会でもありました。
「玄関」「お風呂」「窓」の3つについて欧米の住まいで感じた事をお話ししましたが、靴を脱いで一段上がる事は、床にたくさん付着しているウィルスを室内に持ち込みづらく、豊かな水に育まれた入浴の習慣が清潔な身体を保ち、日頃から風を通して住宅の換気をする。私達日本人の暮らし方と住まいは、感染症対策を考えた上でも頼もしいものと言えるかもしれませんね。
住まいのナビゲーター
一級建築士 松江 真理
次回のナビコラムは
住まいのナビゲーター 金山 眞人さんの「名庭園を訪ねる その1」です。
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