名庭園を訪ねる その1
- 2020年7月2日
- ナビコラム
~京都・東福寺本坊庭園~
古今東西、名園と言われる庭園はあまたございまして、また、それらを解説した書籍やHPもまた、あまたございます。そんな中、今回庭園には素人であるにもかかわらず大胆にも「趣味は庭園巡り」と称している私が、当コラム担当として、庭園巡りをナビゲートさせて頂くことになりました。
と言う次第ですので、本連載には、私が苦手な花木に関係する話はほとんど出て参りません。また、神仙思想やら、亀石がどうした、といった蘊蓄話も、馬脚を現さないよう、最低限にしたいと思います。
では、そんな私がなぜ庭園巡りにはまってしまったのか、というと、昭和の大作庭家・重森三玲(1896~1975)の、とある作品とのかかわりがきっかけ、ということになります。
そこで、本連載は、その三玲の出世作である「東福寺本坊庭園(八相の庭)」からスタートさせて頂きたいと思います。よろしくお付き合いくださいませ。
東福寺には、塔頭も含め、三玲が手掛けた庭が多くあるのですが、そのきっかけとなったのがこの本坊庭園(旧来は「方丈庭園・八相の庭」と言われていましたが、2014年に国の名勝に指定された際に、「本坊庭園」に改めたそうです)です。本庭園は方丈を囲む四つの庭からなりますが、「日本庭園」「枯山水」と言うには大胆でモダンな造形のこの庭園、作庭が1939年、昭和の時代だと聞くと、みなさまどのような感想を持たれるでしょうか?「枯山水というには新しい」と思われるか、はたまた「80年も前なのに、モダンな感覚だ」と思われるか、如何でしょうか??
三玲は「永遠のモダン」を唱えて作庭に取り組んだことで知られますが、そこでのモダンの意味は、常に現代性・同時代性を失わない、その造形精神にあったかと思います。ところで、東福寺以降の三玲の作庭は、「石を立てる」、その大胆で、時に荒々しいまでもの造形性が魅力となっていきます。その観点から見ると、本庭園の四つの庭の中でもっとも大規模な方丈正面、南庭での作法は、確かにその原点であるように思えます。ただ、本庭園には、それとは少し異なった魅力もあるように思います。
特に苔により市松模様を描き出した北庭は、とても分かりやすい形で伝統とモダンの融合を提示したことで、三玲の代表作として広く知られることになりましたが、ここでは強い造形性は影を潜めています。方丈の四周に庭を配すことは珍しいそうですが、廃材利用と言う制約はあったにせよ、ある意味「余白」に力まずに作庭したことが、通俗に堕しかねない、「市松」という際どいボキャブラリーを用いつつも、すがすがしい、まさに「永遠のモダン」な庭園デザインへの昇華に繋がったのかもしれません。
〔基本情報〕
所在地:京都市東山区本町15丁目778
アクセス:JR・京阪電車「東福寺」駅 徒歩約10分、京阪電車「鳥羽街道」駅 徒歩約8分
見学:可
住まいのナビゲーター
一級建築士 金山 眞人
次回のナビコラムは
住まいのナビゲーター 小林 輝子さんの「暮らしを彩る庭からの恵み~庭の役割 その2」です。
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