名庭園を訪ねる その2
- 2020年12月7日
- ナビコラム
~東京・靖国神社神池庭園~
「名園を訪ねる」となると、京都をはじめとする関西方面の庭園が中心になってしまうきらいがあります。もちろん日本各地に素晴らしい庭園があるのですが、質量だけでなく、維持管理状態の良さと言う点でも、京都の庭は圧倒的に良い。それからもう一点、またしても個人的な話で恐縮なのですが、私が江戸時代の、いわゆる「大名庭園」にあまり興味がなく、そして都内にある「名庭園」の類は、実は殆どが大名庭園なので、結果的に、この連載には都内の庭園は殆ど登場予定がなく、どうしても京都が中心となって行きそうな雲行きなのです。ただ、世の中には常に例外というものがありまして、その一つが、今回ご紹介する「靖国神社神池庭園」です。
靖国神社は明治5年に、陸海軍省所轄の東京招魂社として九段の地に創建されたのが始まりです。本庭園の作庭時期は定かではありませんが、創建間もない、明治初期の作庭と言われています。ただ、比較的新しい時期の庭園であるにもかかわらず、作庭者が不明なのは、なんとも残念です。
庭の作りとしては、「池泉回遊式庭園」という、不定形な形状の池を中心に据え、池や周辺にしつらえた小径を船や徒歩で回遊して楽しむ形の庭園です。
靖国神社の庭園は、このタイプとしては小規模ながら、日本で最長とも言われる一枚岩の切石橋、雄大な滝石組や護岸、センスの良い岩島や洲浜といった点景が適宜配され、後年建築された茶亭とも相まって、色々な視点からの景色が楽しめる庭園に仕上がっています。特に石組みについては、関東の石は関西の石に比べて色彩感が乏しいというハンディキャップがあり、そして、それ以上にそもそもセンスで負けているという問題もあって、その魅力と言う点で大きく水をあけられているのが実情なのですが、靖国神社庭園の石組みは、関西の名園に見劣りがしない素晴らしいものです。
庭園は、時間と共に変化し、時には荒廃することもあります。本庭園もその例に洩れなかったようですが、1999年に復元的整備が行われ、往時の姿を取り戻しました。本殿を回り込んだ奥にあるため、「知る人ぞ知る」的なスポットになっている本庭園ですが、東京随一の庭園が無料で観覧できるという意味でも、とても貴重な庭園です。個人的には、鯉のエサやり場(エサは有料)の東屋を廃止して頂けると、更に魅力が増すと考えています。
〔基本情報〕
所在地:東京都千代田区九段北3丁目1-1
アクセス:JR「飯田橋」・「市ヶ谷」駅 徒歩10分、地下鉄「九段下」駅 徒歩5分
見学:可
住まいのナビゲーター
一級建築士 金山 眞人
次回のナビコラムは
住まいのナビゲーター 亀井 真理さんの「暮らしに色を取り入れてみませんか? その4」です。
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